富士フイルム X100VIレビュー カメラはこれ一台で充分と感じる満足感
富士フイルムは販売する現行機種の中でも異質な存在を放つカメラ、それがX100シリーズではないでしょうか。レンズがビルドインされた固定式で、持つ人を選ぶカメラではありますが、一度手に取れば取り憑かれるほどの魅力を兼ね備えたカメラだと個人的には思っています。
X100シリーズはこれまでにアップデートを重ねながら、現行機で6世代めとなります。前世代機「X100V」ではかなり完成されたカメラと言っていいほど作りが良く、全体的にキリッとした画が撮れるのが特徴です。
最新機種「X100VI」は、外観的な変化はX100Vから変わらないものの、4020万画素に高画素化したセンサーと最新の画像処理エンジン「X-Processor 5」を携え、さらにボディ内手ブレ補正も搭載した最強のスナップシューターカメラとなりました。
レンズは固定式、だが実質3種類のレンズを使い分けられる
X100VIのレンズは、フルサイズ換算で35mm程度の標準的な焦点距離のレンズが搭載されています。そのまま撮影すれば4020万画素の高画質な写真を撮ることができます。
ですが、ずっと35mmで撮影するのはちょっと飽きてきますよね。
X100VIはレンズ先端のコントロールリングを回すことで、画面をクロップして画角を変える「デジタルテレコンズーム」という機能があります。2段階クロップすることができ、50mmと70mmの距離で変化させることができます。
X100Vでも同様の機能がありましたが、X100VIは記録画素数が向上したことでクロップしてもある程度画質が担保できるというメリットがあります。
デジタルテレコンを使うことで、35・50・70mmと実質3種類のレンズ(焦点距離)が使えると言っても過言ではありません。
35mmで約40MP(5152×7728)、50mmクロップで約20MP(3648×5472)、70mmクロップで約10MP(2592×3888)となります。10MPだとやや解像感が……と、感じるかもしれませんが、大きく引き伸ばした印刷をしなければ全く問題ない画質です。
シャッター音は控えめで静か、だがそれがいい
X100VIのシャッター音はかなり控えめな音がするメカシャッター(レンズシャッター)です。「ッチ……」と、一瞬撮れたかどうかわからないような音で不安になりますが、ちゃんと撮れてます。
スナップ撮影の場合、カメラを向けて構図をみる間もなくシャッターを切ることも多いので、カメラを向けた相手に撮られる瞬間の威圧感を与えないという意味では、シャッター音が静かなほうがいいのかもしれません。
メカシャッターの設定ではシャッタースピードが最大で1/4000秒までですが、電子シャッターに設定すれば1/180000秒まで上げることができます。シャッタースピードを上げれば野外でも解放で撮れる場面が多くなるので、これはありがたい進化です。
動画性能も大きく進化
X100VIは静止画撮影を撮るためだけのカメラではありません。X-T5と同等の性能を兼ね備えているので、高解像度の動画撮影も可能です。最大6.2K/30pでの撮影が可能で、6.2Kをオーバーサンプリングして4Kで収録する4KHQという撮影モードもあります。オーバーサンプリングとは、一度6.2K(6240 x 4160)の画素数を使いながら4Kで記録する機能です。最初から4Kで撮影するよりも高精細な映像を記録することができます。
ただ動画を撮影するためには一度「DRIVE・DELETE」ボタンを押してメニューに入ってから、動画マークにスクロールして切り替える必要があり、物理的な切り替えボタンがないので動画を撮るにはやや面倒な仕様ではあります。もともと静止画撮影に特化しているため、このカメラでは動画を撮るのはおまけ程度と考えるほうがいいかもしれません。
アドバンスト・ハイブリッドビューファインダーは最大の特徴
X100VIの特徴は「アドバンスト・ハイブリッドビューファインダー」です。光学ファインダーと電子ビューファインダーを自由に切り替えることができるのですが、これが面白い機能です。
ファインダーから覗いた景色を小窓で直接見ながら撮ることができます。電子ビューファインダーに慣れている人は他のミラーレスカメラと同じように使うことも可能ですが、私自信は「ファインダーを覗きながら撮る」という感覚が好きなので、あえて光学ファインダーに切り替えて使っていました。
光学ファインダーの場合だと、実際に小窓から見えている範囲より撮影範囲は狭くなります。ファインダー上に白い枠線とパラメータが表示されるので、感覚は掴みやすいでしょう。
光学ファインダーと電子ビューファインダーを切り替えるには、レンズの上にあるレバーを倒すと切り替わります。
レバーの部分はボタンにもなっています。初期設定ではこのボタンを押すことで、コントロールリングの設定を変更することが可能です。
コントロールリングは、レンズ部分にある回転するリングです。コントロールリングの設定はマニュアルフォーカス時のフォーカス調整として機能するようにもできますし、デジタルテレコンの倍率調整に使うこともできます。
シャッタースピードとISO感度の調整はクラシカルな丸いダイヤル式が軍艦部にあります。両方の機能を兼ね備えているので、そのまま回すとシャッター速度の変更、ダイヤルを少し上にあげて回すとISO感度の変更ができます。
赤いAの部分に合わせていればカメラが被写体に合わせてオートで設定しますが、自分で調整しながら撮影したい場合は、シャッター速度ダイヤルを「T」ISO感度ダイヤルを「C」に合わせます。マニュアル時はグリップ部分の前後にあるダイヤルで調整できるようになります。
とにかく撮っていて楽しいカメラ
X100VIの使用感はとにかく撮っていて楽しいに尽きます。これは単焦点だからというのもあるかもしれませんが、この小さい筐体で決まった画角のものを映す作業は、無駄に画角を調整する手間を省くだけで撮影がとてもスムーズになります。重たいズームレンズを持ち歩かなくても、3つの焦点距離を使い分けることができるので、普段でも持ち歩きたくなるカメラです。
最後に作例をどうぞ。